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出汁と日本人

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日本の水とだしの関係

日本にはさまざまな種類のだしがある
それぞれ風味や組み合わせが異なるため、
料理がより楽しくなります。
だしをとるのに欠かせないのが「水」。

日本の水は、だしをとるのに最適

日本では当たり前のように水道水を飲んでいますが、
海外に目を向けると、日本のように安心して
水道水を飲める地域は多くありません。
日本では水質基準が定められており、
水には細菌を殺すための塩素が含まれているので、
安全に飲むことができます。
一方、海外では、蛇口をひねると濁った水が
出てくるところもあります。
外国の多くは、
日本ほど浄水設備が発達していないのです。
そのような水は、だしをとるには適していません。

また、日本の水はカルシウムやマグネシウムなどの
ミネラル成分が少ない軟水で、
まろやかで飲みやすい水です。
一方、海外の水はミネラル成分が多い
硬水であることが多い。
硬度が高いと、水が美味しくないだけでなく、
石鹸の泡立ちが悪くなったり、
洗髪時に髪がパサついたりと、
食に関すること以外のトラブルも発生します。

日本の水のような軟水は野菜や鰹節などの
出汁に、海外で一般的な硬水は牛肉などの
強い素材の出汁に適しています。
料理人の中には、水の質によって
料理の仕上がりに差が出ると考え、
料理の目的に応じて
軟水と硬水を使い分ける人もいるようです。

また、日本の一部ではペットボトルの水や
家庭用のウォーターサーバーも使用されています。
水質は私たちの体にとって大切なものなので、
飲み水や料理に使う水は慎重に考えたいものです。

世界から注目される日本食

近年、先進国では生活習慣病の予防や健康維持への
関心が高まっており、摂取カロリーを抑え、
動物性脂肪の摂取を控える傾向が加速しています。
このような食生活の流れの中で、健康に良いとされる
日本食ブームも起きています。
日本食は動物性脂肪に頼らず、
出汁のうまみが素材の持ち味
を引き立てます。
こうした料理の知識を得るために、
世界中のシェフが日本を訪れています。

出汁の取り方を学び、動物性脂肪の代わりに
うま味を使う技術を習得し、
以来、うま味を使った
独自の調理法を開発し続けています。
例えば、老舗の日本料理店の懐石弁当は、
具だくさんなのに低カロリーです。
その秘密は、出汁のうま味で
味を引き締めるという
日本料理の技法にある。

だし汁に含まれるうま味の相乗効果

京都の高級老舗料亭の昆布だしと
一番だしのうまみ成分。
昆布だしのうまみ成分はアミノ酸の一種である
グルタミン酸のみで、一番だしはグルタミン酸と
核酸の一種であるイノシン酸を
ほぼ同量含んでいます。

イノシン酸の相乗効果が起こり、
実際のうまみ成分の量の8倍以上の
うまみを感じることができる。
うま味の相乗効果は、
グルタミン酸とイノシン酸が
ほぼ同量存在するときに
最も強くなることが研究でわかっています。
ですから、京都の料亭で使われている
一番だしのレシピは、
とても理にかなっているのです。

日本文化におけるだしの “うまみ “とは?

だし文化は、もちろん日本に限ったことではなく、
多くの国でどんな料理にもだしは欠かせません。
しかし、だしの取り方は国によって異なり、
その国の文化や環境が反映されています。
日本は海と山に囲まれた国なので、
さまざまな食材からだしを
取ることができるのも特徴の一つです。
日本料理で使われるだしには、
かつお節、昆布、煮干し、しいたけなど、
さまざまな種類があります。

これらの出汁は、それぞれ風味が異なります。
これは、それぞれに含まれる
うま味成分の違いによるものです。
うま味とは、単に料理をおいしくするための
成分ではありません。
甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つの基本味を
足したものと定義されています。

うま味は、約100年前に日本人が発見しました。
古くから出汁に使われていた昆布から
グルタミン酸を抽出したのが始まりです。
その後、鰹節のうまみ成分であるイノシン酸や、
椎茸のグアニル酸などが次々と発見され、
日本におけるうまみの歴史は広がり続けています。

干しシイタケのうま味成分が発見されたのは
1957年とつい最近のことなので、
うま味の歴史はまだ浅く、今後の研究で
明らかになることも多いと思われる。

家庭で洋食を作るときに使うコンソメや、
中華料理で使う鶏がらスープは、それぞれのだしを
濃縮して作るので、家庭で簡単に
味を再現することができます。
海外では、セロリやパセリなどのハーブのほか、
牛骨、豚骨、鶏骨などを使った
さまざまなだしが存在します。

これらの素材はそれぞれ異なる
うま味成分を持っていますが、
それぞれを単独で使えばいいと
いうわけではありません。
うま味には相乗効果があり、いろいろなうま味を
組み合わせることで、
料理をよりおいしくすることができます。

例えば、
日本の定番であるかつお節と昆布の合わせだしには、
イノシン酸とグルタミン酸の2種類の
うまみが含まれています。
昆布に含まれるグルタミン酸はアミノ酸系のうまみ成分で、
鰹節や干し椎茸に含まれるうまみは核酸系のうまみ成分です。
アミノ酸系のうまみと核酸系のうまみを組み合わせると
相乗効果があるので、だしをとるときは昆布とかつお節、
昆布と干しシイタケを使うとよいでしょう。