笑えるエピソードシリーズ

田舎あるある

田舎の片隅にある小さな集落に、ナオという女性が住んでいました。彼女は都会の大学を卒業して一度は大都会に就職しましたが、やっぱり地元のゆったりした暮らしが恋しくなり、数年で戻ってきました。田舎の風景は変わらず、心の安らぎを与えてくれますが、やはり「田舎あるある」はどこまでも健在です。

ある夏の朝、ナオは自分の畑に向かっていました。実家の敷地内に小さな畑を持っていて、最近はトマトやキュウリが豊作。収穫するのが毎日の楽しみです。畑に着くと、いつも通り赤く熟れたトマトがたくさん実っていました。「今日もたくさん取れるなあ」とナオが笑顔で収穫していると、遠くから自転車に乗ったおじさんが近づいてきました。

それは近所の農家、タカシさんでした。タカシさんはナオを見るなり、「おーい!ナオちゃん、聞いたか?あそこの山の奥で、クマが出たらしいぞ!」と大声で叫びました。ナオは驚きつつも、「え、クマですか?」と返します。タカシさんは得意げに「そうそう!昨日の夜、うちの奥さんが外で物音を聞いたんだ。絶対クマだってさ!」と言いました。

ナオは「え、それって確かな情報なんですか?」と聞き返しましたが、タカシさんは「まぁ、ほぼ確実だろうな。田舎じゃクマなんて珍しくないしな」と自信満々。その後も、ナオは少し心配になりながらも収穫を続けました。

午後になると、ナオの家の前を近所のおばあちゃんたちが集まり、楽しそうに話しているのが聞こえてきました。ナオが外に出てみると、みんなが「クマが出たって聞いた?」と一斉に話し始めました。「タカシさんの奥さんが見たんだって!」とか「うちの犬も昨夜吠えてたし、絶対だよ!」とか、噂がどんどん膨らんでいきます。

しかし、ナオは心の中で「なんだか話が大きくなってるな」と感じました。

その夜、ナオは寝る前に玄関の鍵を確認し、念のため窓も全て閉めました。「もし本当にクマが出たらどうしよう…」と思いつつ、ベッドに潜り込みました。しかし、夜中の2時過ぎ、突然ガサガサという音が外から聞こえてきたのです!ナオは飛び起きて窓のカーテンをそっと開けてみると、庭の方に黒い影が…。

「クマ!?」ナオは心臓がドキドキして、警察に通報しようと携帯を手に取った瞬間、ふとその影がよく見えました。それはクマではなく、ただの町の野良猫でした。ナオは肩の力が抜けて、思わず笑ってしまいました。

翌日、タカシさんの奥さんにその話をすると、彼女も「あら、うちも同じことがあったのよ。どうやらその『クマ』は、ただの野良猫だったみたいね」と笑顔で話してくれました。

こうして、田舎の「クマ騒動」はあっという間に解決しましたが、数日後には「ナオちゃん、野良猫をクマと間違えて大騒ぎしたんだってね」と町中に広まっていました。ナオはその噂を聞いて苦笑しつつも、「田舎の噂ってやっぱり面白いな」と、のんびりした暮らしにほっと一息つきました。