人間界

認知症の管財方法

認知症などで財産を自分で管理できなくなった場合、事前に適切な対策を講じることが重要です。また、すでに管理が困難な場合にも、法律的な保護手段があります。以下に具体的な方法を挙げます。


Contents

1. 事前の対策

認知症が進行する前に、以下の手続きを行うと安心です。

任意後見契約

  • 内容: 信頼できる人(家族や第三者)を後見人として指定し、将来財産管理を依頼する契約です。
  • 手続き: 公証役場で公正証書を作成。
  • メリット: 自分の意思で後見人を選べるため、将来のトラブルを防げる。

家族信託(民事信託)

  • 内容: 財産を信頼できる家族に託し、自分の代わりに管理してもらう仕組みです。
  • 対象: 不動産や預貯金、株式など。
  • メリット: 認知症が進行した場合でも財産が適切に管理されます。

遺言書の作成

  • 内容: 万が一の事態に備えて、財産分配の意向を明確にする。
  • 手続き: 公正証書遺言が法的に有効で確実。

2. 自分で管理できなくなった場合

すでに認知症が進行している場合、法定手続きで保護を受けることが可能です。

成年後見制度

  • 内容: 家庭裁判所が選任した後見人が、財産管理や日常生活をサポートします。
  • 種類:
    1. 後見: 判断能力がほぼ失われた場合。
    2. 保佐: 判断能力が著しく不十分な場合。
    3. 補助: 判断能力が不十分だが部分的には可能な場合。
  • 申立て: 本人や家族が家庭裁判所に申立てを行います。
  • 後見人の選任: 家族や弁護士、司法書士、福祉専門職が選ばれることがあります。

3. 信頼できる専門家の相談

  • 弁護士、司法書士、行政書士に相談すると、適切な手続きや書類作成をサポートしてもらえます。
  • 地域包括支援センターや市区町村の福祉課でもアドバイスが受けられます。

4. その他の注意点

  • 早めに家族や信頼できる人と相談しておくことでトラブルを回避しやすくなります。
  • 銀行口座や不動産の名義変更など、進行前に解決すべき事項がないか確認することも重要です。

本人の判断能力が失われており、不動産を売却する必要がある場合、成年後見制度を利用するのが基本的な方法です。不動産の売却は重要な法律行為に該当するため、本人の意思確認ができない場合には、家庭裁判所の許可が必要です。以下に具体的な手続きを説明します。


1. 成年後見制度の利用

手続きの流れ

  1. 家庭裁判所に成年後見人選任の申立てを行う
    • 申立てできる人: 本人の配偶者、子、親族、福祉施設の職員など。
    • 必要書類:
      • 申立書(家庭裁判所に提出)
      • 本人の診断書(判断能力が低下していることを証明するもの)
      • 財産目録や収支計画書
    • 申立て先: 本人の住所地を管轄する家庭裁判所。
  2. 成年後見人の選任
    • 裁判所が、本人に適切な成年後見人を選任します。
    • 家族が後見人になれる場合もありますが、場合によっては弁護士や司法書士などの第三者が選ばれることもあります。
  3. 家庭裁判所の許可を得て不動産を売却
    • 成年後見人が選任された後、不動産の売却を行うには家庭裁判所の許可が必要です。
    • 裁判所に対して、売却の理由(医療費など)、売却予定価格、不動産の概要を報告します。
    • 許可が下りると、後見人が本人に代わって売却手続きを進めることができます。

2. 売却に必要な条件

  • 不動産の売却は本人の利益にかなう必要があります。たとえば、病院代や生活費に充てるためであれば、裁判所から許可される可能性が高いです。
  • 売却価格が適正であることを示すため、不動産の評価額を専門家(不動産鑑定士や不動産会社)に査定してもらうことをお勧めします。

3. 注意点

  • 成年後見制度を利用するには時間がかかる場合があります(通常1〜2か月程度)。病院代がすぐに必要な場合は、家族の支援や一時的な融資も検討してください。
  • 売却後の資金は後見人が管理し、裁判所の監督のもとで使用されます。

4. その他の選択肢

  • 家族信託を事前に利用している場合: 認知症になる前に家族信託を活用していれば、不動産売却の手続きはスムーズに進められます。
  • 緊急性がある場合: 地域包括支援センターや福祉課で相談し、一時的な公的支援や制度の利用が可能か確認してください。