ある日のオフィス、私たちの部署は、新しいAIツールの導入に盛り上がっていた。このツールは、日常業務の大部分を自動化し、私たちの仕事をもっと効率的にすることが約束されていた。しかし、導入されてから数日、私たちは笑えるような問題に直面することとなった。
最初の問題は、AIが「完璧」すぎたことだ。たとえば、顧客へのメール返信を自動化する機能があった。AIは、文法や敬語の使い方にとても敏感で、常に完璧なメールを生成してくれる…はずだった。しかし、ある朝、上司の山田さんが顔を真っ赤にして私のデスクにやってきた。
「おい！これ見てくれ！」と彼が叫びながら見せてきたのは、ある重要な顧客からのメールだった。山田さんがAIに返答を任せたそのメールには、無駄に堅苦しい日本語がずらりと並んでおり、何度も「お疲れ様です、尊敬する○○様、謹んでお知らせ申し上げます」といった文が繰り返されていた。最終的には「ご高名なる御社に対し、崇高なるリスペクトを表し、どうぞ私の愚かなる提案をご一読願いたく存じます」と結ばれていた。
「リスペクトってなんだよ！」と山田さんは叫んだ。私もメールを見て、腹を抱えて笑ってしまった。「これはAIがちょっと気合いを入れすぎましたね」としか言えなかったが、AIが本気で書いたその文章は、確かに「完璧」だった。
次に、会議の議事録を自動で生成する機能に挑戦したときの話だ。会議中、AIはリアルタイムで議事録を作成し、私たちはそれを確認しながら進める予定だった。しかし、AIがとらえた音声認識は少し違っていた。
「それでは、今期の売上目標について…」という発言を、AIは「それでは、今期の宇宙旅行について…」と変換していた。さらに進むと、「コスト削減案」の話が「コスト削減アンパン」となり、皆が真面目に話し合っている間に、議事録は全く別次元の会話を描いていた。
誰も気づかずに会議は進行していたが、終わりに議事録を確認したとき、皆が一斉に噴き出した。上司が真剣に「アンパン」について議論していることになっていたり、「今期の宇宙旅行」についての結論を求める議事録が出来上がっていたからだ。「おい、どこの会社だよ、宇宙旅行なんて計画してるのは！」と笑いが止まらなかった。
AI時代における働く者の苦労とは、こういった「完璧すぎるミス」に対応することでもある。自動化によって効率が向上するはずが、気づけばその誤解や誤作動によって、逆に人間の手が必要になる場面も多い。AIは驚くほど優れたツールだが、その「賢すぎる」判断が時に人間を笑わせ、そして混乱させるという教訓を、この一連の出来事で私たちは学んだ。
それでも、私たちはAIと共に働く時代を楽しんでいる。少なくとも、こんな笑えるエピソードが増えることで、日々の仕事に少しだけユーモアが加わっているのだから。
