ある日、タクヤが学校から帰ってくると、リビングでおじいちゃんが一人でスマホゲームをプレイしているのを見つけた。
「おじいちゃん、また岩叩いてるの?」タクヤがからかうように声をかける。
「いやいや、今日はちゃんとモンスターに挑んでおるぞ!」と、おじいちゃんは自信満々。画面をよく見ると、確かにモンスターが動いている…けど、なぜかおじいちゃんのキャラクターは、モンスターから逃げ回っているだけだった。
「おじいちゃん、それ逃げてるだけじゃん!」タクヤは笑いながら言った。
「何を言うか、戦略じゃ!」とおじいちゃんは胸を張る。「戦わずして勝つ! 逃げてればそのうちモンスターも飽きるじゃろう!」
タクヤはお腹を抱えて笑い出す。「そんなこと聞いたことないよ! でも…おじいちゃん、もしかしてそのうち本当にモンスターがあきらめるんじゃない?」
「だろう? 頭を使ってるんだよ。ほれ、孫にはまだまだ負けんぞ!」とおじいちゃんは、やたら得意気。
その後もおじいちゃんは、逃げる「戦略」をしばらく続けていたが、やはりモンスターはあきらめず、ついにおじいちゃんのキャラクターがやられてしまった。
「なんじゃこりゃ! ワシの作戦が破れたとは…」とおじいちゃんは驚愕の表情。
タクヤは「やっぱりね、攻撃しないと勝てないんだよ」と言ってスマホを受け取り、「こうやって…こうやって…」と説明しながらあっという間にモンスターを倒してみせた。
「ふむ…やはり若い者にはかなわんな」と、おじいちゃんはしょんぼりした様子でつぶやいた。
しかし、次の瞬間、「よし! 明日からは真剣に攻める作戦を考える!」と突然やる気を取り戻した。
タクヤは驚きつつも「おじいちゃん、いいね! じゃあ、次のボスも一緒に倒そうよ!」と言って、また二人で一緒に笑いながらゲームを楽しんだ。
その後、おじいちゃんは毎日タクヤにアドバイスをもらいながら少しずつ上達していき、ついにはタクヤも驚くほどの腕前に。だけど、時々おじいちゃんはこっそり「逃げる戦略」に戻して、孫を笑わせることも忘れなかった。